[制約プログラミング落穂拾い] 制約プログラミングは使われているか:スケジューリング・シンポジウム2008に参加して

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山崎です。

今回は9/19,20に青山学院大学で開催されたスケジューリング・シンポジウム2008(主催:スケジューリング学会)に参加して、制約プログラミングについて感じたことを書こうと思います。ものづくりAPS推進機構(APSOM)も協賛団体として名を連ねていますし、APSOM/PSLXに関連しての感想もありますが、そちらはまた別の機会に。

今回のシンポジウムはスケジューリング学会の創立10周年記念ということで、特別講演が2つ、その間にはパイプ・オルガン演奏(J.S.バッハのコラール・プレリュードとプレリュードとフーガを各1曲)という豪華なイベントもありました。

 

制約プログラミングって何ですか」という質問を受け、簡潔な説明を求められることは業務上何度も経験してきました。最近ではゴールドラットのTOC(制約の理論)が有名になったこともあって、それと混同されることもしばしばです。勿論、お客様にとっては自分の課題が解決できるかどうかが重要で、制約プログラミングは選択肢の一つに過ぎません。手法を手際よく、わかりやすく説明し、それが問題解決の手法として適切であることを納得していただくのは、私たちの仕事の重要な一部です。

それでは、問題解決の手法の一つとして制約プログラミングはどの程度定着しているのでしょうか。私たちが制約プログラミングに取り組み始めた当初と比べて、問題解決を提供するサイドの世界の住人の中での認知度や定着率は高まっているのでしょうか。

色々なところで、機会があると言っているのですが、私の「体感」は「認知度はあがっているし、定着も着実に進んでいる」です。しかしながら、断片的な情報に基づくおおまかな印象に過ぎず、裏づけとなるデータがあったわけではありません。

 

ところが今回、スケジューリング・シンポジウム2008のセッションに参加したり、講演論文集を読んだりして、着実に制約プログラミングが普及し、利用されていることがはっきりと窺えたように思いました。

まず、チュートリアルセッションが1つあったのですが、これがずばり制約プログラミングを題材にしたものでした。

株式会社数理モデリング研究所の野末尚次さんによる「スケジューリング問題への制約プログラミングの適用 ―ILOG Solver/Schedulerを実例として―」がそれです。基礎から応用まで1時間にわたってバランス良く解説されたすばらしいチュートリアルだったと思います。会場の関心も高さは、会場となった会議室の席の埋まり方に端的に表れていたように思います。

それ以外のオーガナイズド・セッションでも、ざっと確認できた限りで4件の発表が制約プログラミング技術を何らかの形で利用したものでしたし、関連の深い制約充足問題(CSP)によるアプローチまで含めれば、更にその数は増えます。また、実用システムへの適用事例が多かったのも印象的でした。

「50件近い発表のうち、チュートリアルを含めてもたった5件じゃないか」と思われる方もおられるかも知れませんが、発表のテーマは多岐にわたっていますし、1つの学会・シンポジウムの中で1割が関連していたというのは私個人としては予想外の多さでした。

もともと制約プログラミング技術は、人工知能と数理計画の両方の技術の融合として生まれてきた経緯がありますが、まさに数理計画やメタ・ヒューリスティクスなどの技術と組み合わせることにより、実用的な問題に有効に利用されていることを確認できたように思えます。

 

それでは、制約プログラミングの更なる普及を妨げているものは何なのでしょうか?これは私自身の問題でもあります。この点については、チュートリアルの最後に野末さんがおっしゃっていた「モデル化のノウハウの習得が大変である」というお話が印象的でした。これは正鵠を射た指摘だと思います。

ビジネス上、モデル化のノウハウの蓄積が差別化の武器になるというのも事実なのですが、ビジネスの広がりを阻害しているマイナスも実感しています。一層の普及を図り、ビジネス・ドメインを拡大するにはどうしたら良いか、この機会に再度じっくり考えてみようと思いました。

それではまた。

 

 

 

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